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京都市北部クリーンセンター懲戒免職控訴事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント解雇
事件名
京都市北部クリーンセンター懲戒免職控訴事件
事件番号
大阪高裁-平成21年(行コ)第160号
当事者
原告…個人1名、被告…京都市
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
2010年08月26日
判決決定区分
容認(原判決取消)
事件の概要
 本件は、京都市Y(一審被告、被控訴人)が、Yの職員として京都市北部クリーンセンター関連施設プール管理運営協会(以下、「本件協会」という。)事務局の事務所長の職にあったX(一審原告、控訴人)を、①本件協会の女性臨時職員に対するセクシュアル・ハラスメント(以下、「セクハラ」という。)行為、②タクシーチケットの私的流用、③物品販売手数料の簿外管理等、以上の3点を理由として地方公務員法29条1項各号により2006(平成18)年12月27日、懲戒免職処分(以下、「本件処分」という。)としたことにつき、XがYに対し、本件処分は理由がなく、仮に懲戒理由があったとしても懲戒免職処分は重過ぎる処分であり、比例原則に反し許されないと主張して、本件処分の取消を求めた事案である。
 一審は、公務員の懲戒処分について当局の裁量権に関する神戸税関事件(最高裁 1977年12月20日判決・民集31巻7号1100頁)を引用したうえ、処分理由①につき、Xは少なくとも1名以上の女性臨時職員にわいせつな言辞を繰り返し、②のチケットの私的流用、③の正規手続きを欠いたまま業者と自販機設置、物品販売に関する契約を締結したことによる手数料の簿外処理、私的消費の事実は認めたうえで、②③を懲戒処分に匹敵すると評価することには裁量の逸脱はなく、①のセクハラに関しては京都市職員の懲戒処分に関する指針(以下、「懲戒処分指針」という。)が免職または停職の事由として定める「相手の意に反することを認識した」ことを裏付ける的確な証拠は欠けるものの、職業上の地位、権限を不当に行使したものであって到底許されるものではなく、その責任は極めて重いため、認定された事実も併せて考慮すれば、YがXに懲戒免職処分をしたことは裁量の逸脱に当たらないとし、Xの請求を棄却した。これを受けてXが控訴した。
主文
1 原判決を取り消す。
2 京都市が平成18年12月27日付でした懲戒免職処分を取り消す。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
判決要旨
 Xの女性臨時職員に対するセクハラ行為を本件処分の理由とすることはできず、Xによるタクシーチケットの私的使用並びに自販機手数料及び物品販売手数料の不適正な簿外管理があるものの、これらを理由としてXを懲戒免職処分とするのは重きに失し、本件処分は違法であるものと判断できる。
 ①につき、YはXが勤務時間中に本件協会の女性臨時職員6名に対し、性的関心に基づく発言や性的交渉を求める発言を繰り返し、当該職員に不快感、嫌悪感を与えたことが懲戒処分指針上のセクハラ行為に該当する旨を主張する。しかし、当該セクハラ行為については、Xのした発言の内容や日時等が具体的に特定されていない点が問題であり、本件が懲戒免職という重い処分が問題となっていることからすると、特段の事情がない限り、処分理由となる事実が具体的に特定されていなければ、これに対する防御の機会が与えられたことにはならないから、これを処分理由とすることは許されない。一口にセクハラ発言といっても、それまでの両者の関係や当該発言の会話全体における位置づけ、当該発言がされた状況等も考慮する必要があり、Xがした性的発言の内容はもとより、その発言をした日時をできる限り特定し、発言を受けた相手方の氏名を示す必要がある。
また、氏名を明らかにすることを承諾し、セクハラ被害を訴えていた訴外Zは、Xに抱きつく、他の女性臨時職員の前でXに対し性的な発言を自分からする等していたものであり、Zは当時のXの発言を許容範囲と考えていたことがうかがわれ、Zに対する発言をもって懲戒処分指針に定める「相手の意に反して、性的な行動をとった」ものということはできない。Z以外の臨時職員に対する言動については、当該職員が誰であるのかすら特定されておらず、発言内容について具体的にXに告げて弁明の機会を与えていない。したがって、セクハラ調査委員会の調査報告書(以下、「本件調査報告書」という)に記載されたような発言をした事実があったとしても、これを処分理由とするのは手続き的に著しく相当性を欠くというべきである。
 また、本件調査報告書によっても、Xが日常的に性的な内容を含む発言を繰り返していたという程度の心証を抱かせることはできるが、それが懲戒事由としてのセクハラ発言として、具体的に特定して認定し得るだけの証拠はないと言わざるを得ない。
 ②につき、本件協会のタクシーチケットは、Yの公金・公物ではなく、その業務外目的での使用は懲戒処分指針の「公金又は公物の横領」等に該当せず、また、③につき、物品手数料の簿外管理は上司も黙認しており、また手数料収入は主に職員の福利厚生や来客接待経費に充てる等全くの個人的消費とはいえないため、いずれも軽い処分が想定されている「公金公物処理不適正」に該当し、Xに対する懲戒免職処分は平等取扱原則に照らして重きに失し、本件処分は裁量を逸脱している。
 以上によれば、本件処分は違法であって、Xの請求を棄却した原判決は取消を免れない。
適用法規・条文
地方公務員法29条1項
収録文献(出典)
労働判例1016号18頁
その他特記事項
本件は上告受理申立がなされた。