判例データベース

住宅施工業者暴力等事件

事件の分類
解雇
事件名
住宅施工業者暴力等事件
事件番号
東京地裁 − 平成2年(ワ)第8735号
当事者
原告 個人1名
被告 株式会社
業種
建設業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1992年09月18日
判決決定区分
棄却
事件の概要
被告は住宅を中心とした建築施工と分譲などを営む株式会社であり、原告は平成元年3月31日以来被告の営業社員として勤務していた者である。

M部長は平成2年5月末頃、原告が新宿センター内の受付に勤務する女性社員Fに対し交際を執拗に申し込み、Fがこれを断っているのに原告がこれを理解せず、電話をしたり手紙を渡したりしていたことを知ったことから、原告の直属の上司T課長に対し原告を注意するよう依頼した。同依頼を受けたT課長が、平成2年6月23日、原告に対しFに交際を求めることを止めるように注意したところ、原告はプライバシーに属することとして拒否するとともに、Fの元に赴き、自分に注意するようM部長らに頼んだかどうかを確認した。原告の興奮した様子を見たE次長が原告に事情を聞くと、原告はM部長の部署に赴き、「Mはいるか」と怒鳴りながら同部の部屋に入り、M部長がいないとみるや、「Mはどこへ行ったんだ」と大声で叫び、総務部の部屋に向かった。原告は総務部の自分のデスクにいたE次長に対し、受付に何の用事で来たのかを問い、激昂して机を叩くなどした上、「舐めるな」と言いつつ、E次長のネクタイの結び目付近を掴み、E次長の身体が浮き上がるほど上方向に力一杯引っ張り、周囲の者が引き離した後も、なおE次長に掴みかかろうとした。

原告は、勤務していた千葉支店長に着任したWが同支店の女子社員に対してセクシャルハラスメントをしているとして同支店長を嫌悪していたが、同支店の合同朝礼に原告が遅刻して注意された際、「お前は支店長の資格はない。お前に偉そうに注意されることはない。バカやろう」などと怒鳴り、その後も反省の色を見せなかった。また原告は、女子社員がW支店長のセクハラに迎合しているとして、同女を怒鳴りつけ、掴みかかろうとした。更に原告は、W支店長がセクハラをしている旨の張り紙を営業所内に無断で掲示するなどし、同支店で常務がW支店長を褒めたところ、原告は同常務に詰め寄り、話し合いの場においてもW支店長に対し{バカやろう、会社を辞めろ}と罵声を浴びせたほか、常務に対しては本部長の資格はない等の発言をした。
被告は、原告の暴力行為や一連の言動が就業規則の懲戒解雇事由に該当するとして、平成2年7月2日で懲戒解雇処分に付したところ、原告は十分な弁解の機会を与えないまま事実関係を誤認し、かつ情状や他の処分との均衡を考慮しないもので、懲戒権の濫用に当たり無効であるとして、従業員としての地位の確認と賃金の支払いを請求した。
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
被告の従業員懲戒規程によれば、社長の任命する懲戒委員会を設けることがあり、同委員会に付された者は同委員会に出頭し立場を弁明することができるが、右委員会は必ず開かなければならないものではなく、本件において懲戒委員会が開かれなかったからといって、本件処分が無効になるというものではない。もっとも、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重い処分であるから、事実関係や情状関係について十分な調査をするとともに本人の弁解を聞くことが望ましいことはいうまでもない。本件について、被告人事部長は、その都度報告を受け、勤務環境を変えるため原告を東京支店に転勤させるなどしてきたが、平成2年6月24日にK課長から本件事件について報告を受け、本件暴行の目撃者から事情を聴取した上、原告からも事情を聴取し、その結果、当該暴行を到底容認し難いものである上、原告が全く反省していないことから、懲戒解雇もやむを得ないとの判断に至り、懲戒権者である社長に報告し、社長も同様の判断をしたことが認められ、右経緯に照らすと、被告は十分な調査、検討の上本件処分を決定したものというべきである。

原告の暴行は、ネクタイを力一杯引っ張るというもので、暴行の態様自体が悪質であるほか、その動機においても特段酌むべきところはないというべきである。また、原告の本件暴行は決して偶発的、一過性のものではなく、原告の独善的かつ極端に激しやすい性格に根ざしたものであるといわなければならない。そして、原告は本件の前にも何回かその協調性のなさや独善的性格について注意を受けていたにもかかわらず、悪いのは自分ではなく支店長ら上司であるなどとして全く反省せず、かえって同支店長らに対する憎悪を募らせていたことが認められるのであるから、被告が原告の性格を改善不能と考えるのはもっともであり、また原告の本件暴行が原告のこのような性格に根ざしている以上、今後とも同様の事態が発生することは十分に予想されるのであるから、懲戒処分のうち、解雇という手段を選択したことはやむを得ないというべきであって、被告が前記のとおり調査等をした上本件処分に及んだことをも考慮すると、本件処分が懲戒権の濫用に該当するということはできない。

原告は、支店長が被告女子社員に対しセクシャルハラスメントをしていたほか、M部長も原告に対し暴行を働いており、これが原告の本件暴行を誘発したなどとして、両名を懲戒せず、原告のみについて懲戒解雇処分をするのは、処分の均衡を失するものと主張するが、仮に原告の主張する事実が存在していたとしても、原告の本件行為の動機、態様及び本件行為に至るまでの原告の行状に照らすと、本件処分を無効とするほどの処分の不均衡があるとは思えない。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働判例617号44頁
その他特記事項

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