専門家コラム

三大不足(栄養・睡眠・運動)とそのリスク、対策

1.働く女性は深刻な三大不足に陥っている

15歳~64歳の女性の就業率が約70%と過去最高になりました。妊娠・出産を経ても定年まで働き続けることが一般的になりつつありますが、そのことで生じる健康面への課題が顕在化しつつあります。 一般社団法人ラブテリが行った働く女性を対象にした調査では、働く女性はOECD加盟国でもっとも睡眠時間が短く、終戦直後を下回るカロリー摂取状況であり、約半数がデスクワーク中心のため運動(活動量の不足)に該当していました。つまり、多くの働く女性が深刻な三大不足 (睡眠・栄養・運動)状態にあるのです。

2.三大不足によるリスクは多くの影響を及ぼす

調査の結果、働く女性の1日の平均摂取カロリーは 1,500 kcal以下であり、この数値は終戦直後を下回っています 。カロリー不足=食事量の不足は、貧血や不妊症リスクを高める「新型栄養失調」に陥りやすくなります。 主な理由として、働く女性は全国平均を上回る「朝食欠食」 (36%)か゛あります。ダイエット意識や身支度による「意識的」な欠食と、残業や夜勤によって夕食時間が遅くなり、朝食の食欲低下・睡眠 時間確保の優先といった「環境課題/身体的」理由が挙げられます。 朝食欠食は、血糖値の乱れや体内時計の乱れにつながり、うつ病や糖尿病といったアブゼンティーズムのリスク因子となります。

該当する女性自身にも、今は致命的な健康上の問題があるとは限りません。自覚症状としては、なんとなくだるい、冷えが気になる、生理前は精神的なアップダウンや、頭痛・腹痛などの不調程度かもしれません。 しかし、生涯にわたりホルモンバランスの揺らぎを受ける女性は、日頃のこうした小さな不調や、生活習慣(三大不足)の健全化が重要です。             

 

1.「全国保健室調査」Copyrightc 2017 一般社団法人ラフ゛テリAll Rights Reserved.
2.「全国保健室調査」Copyrightc 2017 一般社団法人ラフ゛テリAll Rights Reserved.

3.睡眠・運動の不足がパフォーマンス低下に拍車をかける

日本女性の睡眠時間は世界各国と比較しても圧倒的に短い5ー6時間、睡眠の質に対する満足度も低い傾向にあり、量と質ともに不足していることが明らかになっています。また、デスクワーク中心の女性が多く、 運動量はおろか日常生活における活動量も低い結果に。 このような生活習慣は疲労の蓄積などにつながり、パフォーマンス低下に拍車をかけ、将来的な疾病リスクの上昇 / 医療費圧迫など、本人だけでなく企業的にも長期的かつ多角的な損失の温床となることは否定できません。           
2020年は企業にとって社員の感染症対策が急務となりましたが、睡眠不足は免疫力を低下させることでも知られています。実際に、コロナウイルスに関わらず、感染症の流行期に避けたいのは寝不足です。睡眠時間が7時間未満の人は8時間以上の人に比べて約3倍風邪にかかりやすいという研究報告があります 。 具体的には、6時間未満の睡眠時間で唾液中のIgAが減少することもわかっています 。
時間が充足していても、質が悪い場合も感染リスクを高めてしまいそうです。健康な男女153人の眠りの質を評価し、そのあとに風邪ウイルスを鼻に投与した研究では、発症率は眠りの質が高いほど低かったことも報告されています。

4.心身のコンディションと生産性アップのための「働き女子メソッド」

働く女性が妊娠・出産などのライフイベント、ホルモンバランスのゆらきなどに負けず、健康的に定年まで勤め上げるために推奨したい“女性のための新習慣”をご紹介したいと思います。 女子栄養大学との共同研究により編み出されたメソッドを実践/継続いただいた女性からは、

  • 眠りの質が改善された
  • 午前中の集中力が格段にUPした
  • 疲労感の軽減を実感した

などの感想を多数いただいています。男性のメタボ改善含め、健康習慣の定着は難しいものですが、本メソッドは1ヶ月の継続率9割達成、3ヶ月の継続率も同数値を実現しています。

3.Arch internMed.2009;12;169,1:62-7
4.行動医学研究 15.No1
5.Arch internMed.2009;12;169,1:62-7

働き女子 6つの新習慣メソッド

食生活

1.朝ごはんを食べよう血糖コントロールや体型管理 / 体内時計を整えあらゆるホルモン分泌を整えてくれるため、朝ごはんを食べる習慣は、夜の眠りも整える習慣となります。

2.朝ごはんにたんぱく質を食べよう体内時計のリセット効果を促してくれるたんぱく質。たんぱく質の消化によって熱を生み出し、冷えの予防や、筋肉量 / 体脂肪率を適正に整える効果も担っています。

3.栄養のあるおやつを食べよう忙しく働く中で、3食で必要な栄養素を補うことは簡単ではありません。栄養のあるおやつを チョイスして、おやつタイムを栄養を補うチャンスタイムにしましょう。

4.カフェインを1日300m以下に抑える眠りの質を低下させてしまうことで認知が高い「カフェイン」ですが、美容ドリンクや栄養ドリンクなどにも含まれています。なるべく18時以降の摂取を控えることもオススメです。

運動

5.1日8,000歩 歩く

運動習慣の獲得は難しくとも、階段の利用や電車で立つといった活動量UPから始めましょう。階段の「2UP/3DOWN」の習慣で、トイレは別のフロアを使用することは気分転換にもなりオススメです。8,000歩が難しい時は、 早歩きで3,000歩でも構いません。

睡眠

6.1日6時間以上眠る6時間以上の睡眠が翌日のパフォーマンスに満足感をもたらすことがわかっています。 睡眠時間確保のために時間の使い方を振り返ってみるはいかがでしょうか。

豊永彩子先生

著者:豊永彩子先生
管理栄養士/フリーランス
一般社団法人Luvtelli(ラブテリ)