専門家コラム

テレワークに関連した不調

新型コロナウイルスの影響で、テレワークを開始した、という方も多いかと思います。今後、新型コロナウイルスの感染が終息した後も、テレワークは、一つの働き方として、定着するものと考えられます。
テレワークは、満員電車に乗る負担もなく、通勤時間も節約できていい!という意見もありますが、さまざまな不調を起こす危険性もあります。うまく予防、早期対処をして、体調不良に陥ることのないように、気をつけたいものです。
テレワークに関連した体調不良としては、以下のようなものがあります。

1.対面でないことによる不調

精神的な不調:対面ではなく、インターネットあるいは電話での情報伝達になりますので、関係部署等に、正確な情報、微妙な意図が伝わらず、精神的な負担になることがあります。直接見えないからこそ、きちんと仕事をしないといけない など、過度の負担を感じる方もいます。また、職場の同僚と、愚痴をこぼして気持ちを共有するようなことも難しいために、緊張感や不安感が強くなることがあるようです。
テレワークのみの期間が長期化すると、気分の落ち込み、集中力や注意力の低下、不眠など、さまざまな精神症状が起こる危険性も高くなります。 同僚と仕事以外の連絡をしてみたり、上司に率直に気持ちを伝えたりして、無用な緊張感や不安感を溜め込まないように、工夫するといいでしょう。

2.通勤、オフィス内外の移動がなく、デスクワークが長時間になるための不調

通勤もなく、オフィス内外の移動がないことにより、運動不足になりやすく、そのために起こりやすい不調もあります。

  • 下半身の筋力低下:筋力が減るとともに、筋肉量も減り、外出するのが億劫になったり、外出時に疲れやすさを感じ
    やすくなります。
  • 腰痛:腰に負担のある姿勢で長時間過ごす場合には、腰痛が起こりやすくなります。
  • 血栓症:長時間、座り続けると血流が滞ってしまい、血栓症を起こす危険性が高くなります。足に血栓ができると、
    ふくらはぎが痛み、ひどくむくみます。稀ではありますが、血栓がもとで、心筋梗塞、肺梗塞が起こる可能性もあります。

このような不調に陥ることがないように、仕事をしながら足首を動かす、仕事の合間に簡単なストレッチをする、時間が取れる時に
散歩やウォーキングをするといった取り組みが望まれます。血栓症予防としては、水分も適切に摂ることが必要です。

3.パソコン操作が長時間になることによる不調

オフィスワーク以上に、パソコンを見続ける時間が長くなりやすく、オフィスとは違ってデスクやパソコンの環境を整えられないために、起こる不調もあります。

  • 上半身の筋肉関節のトラブル:手指、肘、肩、首に痛みを生じやすくなります。首や肩の筋肉の緊張がもとで、頭痛に悩まされることもあります。
    また、長時間にわたって、うつむいた姿勢のまま過ごすと、腕や指のしびれが感じられるようになることがあります。  椅子の高さを調節するなど、無理のない姿勢が取れるような工夫、過剰な緊張にならないように適宜ストレッチや脱力運動をする、といった対応が望まれます。
  • 目のトラブル:ドライアイや眼精疲労になる場合があります。眼精疲労は、目の疲れ、かすみ、乾き、充血といった目の症状だけでなく、肩こりや頭痛、めまい、吐き気、だるさなどを伴います。休憩なしで長時間、パソコン作業を続けることにより、視力が落ちることもあります。
    パソコンの使用環境としては、パソコン画面に照明器具や窓などが映りこまないようにする、室内と手元の明るさの差を、なるべく小さくする、ということが望まれます。
    定期的にパソコン画面から目を離し、遠くを見て目を休める、ということもできるといいですね。症状が強い場合は、早めに、眼科で診察を受けることを勧めます。

4.さまざまな要因から生じる不調

新しい働き方に馴れず、さまざまな要因からイライラしやすくなる、という方も多いようです。その場合には、適切なアンガーマネジメントができるといいでしょう。「怒りを感じたら、まずは6秒間やり過ごす」「怒りの内容を手のひらに書く」「怒りの度合いを温度で表現し、記録する」 「不要な『~すべき』を手放す」「しょうがないことは割り切る」など、アンガーマネジメントのヒントがいろいろありますので、ご自身に合った対処法を身に着けられるといいですね。

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<br>産婦人科医師

著者:星野寛美先生
産婦人科医師
関東労災病院 働く女性専門外来担当