専門家コラム

流産・死産後の体調について

1.流産、死産は「私だけ」?

月経が遅れて、妊娠を確認しても、全ての方が出産に至るわけではありません。
月経が遅れて、市販の妊娠検査薬を試してみたら妊娠していると確認できたけれど、クリニックなどで超音波検査を受けても、「まだ、子宮の中に、赤ちゃんの袋は見えませんね」と言われた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?その後、出血が始まり、「月経が少し遅れただけ」というような状態で起こる流産を「化学流産」と呼んでいますが、これは、全ての妊娠の3~4割で起こると言われています。また、その後の時期の流産も約15%の方に起こると考えられています。その他に、1%程度の方は、死産となります。

「流産」は妊娠21週6日までの時期に、赤ちゃんが母体の外に出ることを指します。現在は、超音波検査で、赤ちゃんの心臓の動きを確認できますので、赤ちゃんの心臓が止まった後も、しばらく母体の中に留まることがあり、そのような場合は、「稽留(けいりゅう)流産」と呼んでいます。

「死産」は妊娠22週0日以降に、赤ちゃんが亡くなった状態で出産になることを指します。

なお、法律上は、妊娠12週0日以降の流産および死産に対して、「死産届」を役所に届け出ることが義務付けられています。

流産や死産を経験した方にとっては大きな悲しみであり、「なぜ、自分だけ、こんな状態になったのか?」と悩みがちですが、実際には、一定の確率で起こっています。そうは言っても、大きな悲しみであることに間違いはなく、それを受け止めるためには、パートナーの支えが必要です。

2.流産・死産後の体調は?

妊娠の週数が早い時期であれば、流産後の体調の回復も早いのですが、予定日近くの時期に死産となるような場合には、通常の出産後と同じように、体調が妊娠前の状態に戻るまでには、数ヶ月必要です。

流産、死産という大きなできごとがストレスとなり、しばらく気分が落ち込むことは、ごく自然な状態です。クリニックによっては、心理相談を受けられますし、グリーフケアに取り組んでいる自治体や団体もありますので、必要に応じて活用するといいでしょう。流産後は、通常1週間程度、出血が続きます。場合によっては、生理痛のような腹痛も伴うことがあります。  

妊娠12週以降の流産や死産では、その後に、乳汁の分泌がある場合があり、必要に応じて、乳汁の分泌を抑える薬を服用します。乳腺が張って痛むような場合には、冷やしたり、痛み止めで対処します。症状がひどい場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。流産後、約1か月後には、月経が再開します。  

体の回復が順調かどうかの確認のため、基礎体温を測定することをお勧めします。

3.流産・死産後の職場復帰は?

仕事への復帰は、体調がよければ早い時期に可能ですが、クリニック等の診察の指示がある場合には、指示通りに受診し、その後の体調の確認を受けることが必要です。

妊娠4 ヶ月以降の流産・死産(人工妊娠中絶を含む。)については、産後休業の対象であるため、労働基準法により、事業主は、原則8週間、当該労働者を就業させてはならない、となっています。(本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就く場合には6週間でも可。)

また、流産や死産後に復帰してきた方に対して、職場では一般的な病気の回復後の方と同じように、疲れ過ぎることがないように配慮できるといいでしょう。

星野寛美先生

著者:星野寛美先生
産婦人科医師
関東労災病院 働く女性専門外来担当

〇<サイト内リンク>
「流産・死産」