判例データベース

Z社出勤停止。懲戒解雇等事件(パワハラ)

事件の分類
解雇
事件名
Z社出勤停止。懲戒解雇等事件(パワハラ)
事件番号
最高裁 - 昭和56年(オ)第284号
当事者
上告人 株式会社
被上告人 個人1名
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1983年09月16日
判決決定区分
原判決破棄自判
事件の概要
 被上告人(第1審原告・第2審被控訴人)は、上告人(第1審被告、第2審控訴人)に組立工として勤務していたところ、昭和46年11月14日沖縄返還協定阻止のデモに参加し、凶器準備集合罪等の嫌疑で逮捕され、同年12月6日まで拘留されたため、その間欠勤した。被上告人は同月8日に出勤したが、被上告人の欠勤中に作業の編成替えが行われ、被上告人は余剰人員として取り扱われたが、勝手に職場に割り込んで作業を行い、事情聴取のための労務課への出頭命令も拒否し続けた。そこで上告人は、同月13日、被上告人に自宅待機を命じたが、同人は同月14日から17日まで連日入構しようとして警士とトラブルを繰り返したため、同人を20日間の出勤停止処分とした(第1次処分)。被上告人は、その後も就労要求のゼッケンを着けて入構しようとして警士ともみ合い、週2、3回会社門前で抗議ビラの配布を続けたことから、上告人は昭和47年1月21日、被上告人を20日間の出勤停止処分に処した(第2次処分)。

 上告人は、第2次処分満了日に、被上告人の働く適当な場所がないとして、同年2月13日同人に無期限の自宅待機命令をしたが、被上告人は同年2月16日、工場ゲリラと称する17名の者とともに工場内に入り、これを排除しようとする警士ともみ合いになり、更に同月23日には工場内に立ち入り、警士ともみ合い、1人の警士に傷害を与える等したことから、上告人は同年3月30日、被上告人を懲戒解雇した。

 被上告人は、第1次、第2次の処分及び本件懲戒解雇処分は、人事権を濫用したもので無効であるとして、これらの処分の取消しを求めたところ、第1審、第2審とも第1次処分は有効としたものの、第2次処分及び本件懲戒解雇処分をいずれも無効と判示したことから、上告人はこれを不服として上告に及んだ。
主文
 原判決中上告人敗訴部分を破棄し、右部分に関する第1審判決を取り消す。

 前項の部分につき、被上告人の請求をいずれも棄却する。

 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
判決要旨
 本件第2次処分及び本件懲戒解雇がいずれも権利濫用に当たるとする原審の判断は首肯することができない。思うに、使用者の懲戒権の行使は、当該具体的事情の下において、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になると解するのが相当である。

 このような見地に立って、本件第2次処分をみると、その対象となる行為は、本件第1次処分前の行為であり、しかも本件第1次処分の対象となった一連の就労を要求する行為とその目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、被上告人は本件第1次処分を受けたにもかかわらず何らその態度を改めようとせず、右処分は不当で承服できないとしてこれに執拗に反発し、その期間中工場の門前に現れてビラを配布する挙に出たことを併せ考えると、必ずしも合理性を欠くものではなく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用とすることはできない。

 次に本件懲戒解雇について考えるに、被上告人は職場秩序に服し、上告人の指示命令に従い、企業秩序を遵守するという姿勢を欠いており、自己の主張を貫徹するためにひたすら執拗かつ過激な実力行使に終始し、警士の負傷、ベルトコンベアの停止等による職務の混乱を再三にわたり招いているのであって、その責任は重大といわなければならない。

 原審は、被上告人の右行為は、自宅待機命令に反発したためであるところ、上告人の規模及び被上告人の作業内容に照らせば、被上告人に代わりの職場を当たることは上告人にとって容易なことであり、その余地と余裕は十分にあったから、右自宅待機命令は正当な理由なくされたものであるという。しかし上告人としては、将来の企業秩序の維持にできるだけ支障を及ぼすおそれがないように被上告人の新たな配置先を慎重に決定する必要があり、被上告人の右自宅待機命令に至るまでの一連の行動に徴すると、右の決定が上告人にとってそれ程容易であったとは考えられないから、右命令には合理性がないと断定するのは早計のそしりを免れない。また、自宅待機期間中も賃金は支払われるのであって、被上告人に特段の経済的不利益を及ぼすものではないから、これをもって被上告人の権益に対する重大な侵害であるかのごとく考えるのは相当でない。したがって、右自宅待機命令に反発した被上告人の行為に同情の余地があるとすることはできない。

 もっとも被上告人は、昭和46年12月13日に自宅待機命令を受けて以来、引き続き就労を拒否されていることになるのであって、これに焦燥を感じたとしても若干無理からぬ面があり、上告人の一連の措置には被上告人の立場に対する十分な配慮を欠いたうらみがないではない。しかし、そうであるからといって、被上告人の行為が是認されるべきいわれはない。被上告人は、実力を行使して工場構内に入構しようとし、そのために多数の警士に傷害を負わせ、更に一時的にせよベルトコンベアも停止させざるを得ないような事態を招いており、右の警士の度重なる負傷をもって、原審のいうように偶発的なものと評することはできない。実力をもってしてもあくまでも就労しようと試みる被上告人と、これを阻止しようとする警士との間でもみ合いとなるのは必然的な成り行きであって、その過程で警士が負傷する可能性のあることは被上告人にも当然予想できたことといわなければならない。また、原審は、ベルトコンベアの停止による被害の程度は微々たるものであるとして、被上告人のもたらした結果を殊更無視しようとしているが、被上告人の行為により工場の業務そのものにまだかかる具体的な被害が招来されたことは、むしろ極めて重大な事態といわなければならない。自宅待機命令が必ずしも適切なものではなく、被上告人が右命令は不当なものであると考えたとしても、その撤回を求めるためには社会通念上許容される限度内での適切な手段方法によるほかはないのであって、被上告人の行為は企業秩序を乱すこと甚だしく、職場規律に反すること著しいものであり、それがいかなる動機、目的の下にされたものであるにせよ、これを容認する余地はない。被上告人が当時未成年であったということも、その責任を軽減する理由になるものではない。

 以上のとおり、被上告人としては自己の立場を訴え、その主張を貫徹するにしても、その具体的な手段方法については企業組織の一員として自ずから守るべき限度があるにもかかわらず、本件懲戒解雇の対象となった被上告人の行為は、その性質、態様に照らして明らかにこの限度を逸脱するものであり、その動機も身勝手なものであって同情の余地は少なく、その結果も決して軽視できないものである。しかも被上告人は、長期欠勤の後にようやく出勤して以来、一貫して反抗的な態度を示し、企業秩序をあえて公然と紊乱してきたのであるから、上告人が被上告人をなお企業内に留め置くことは企業秩序を維持し、適切な労務管理を徹底する見地からしてもはや許されないことであり、事ここに至っては被上告人を企業外に排除するほかないと判断したとしても、やむを得ないことというべきであり、これを苛酷な措置として非難することはできない。それ故、上告人が被上告人に対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできない。
適用法規・条文
収録文献(出典)
[収録文献(出展)]
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