専門家コラム

カフェイン・アルコールの影響について

日々の習慣でもあり、なくてはならない存在…という方も多い、カフェイン・アルコール。
飲み過ぎは良くない…という事はご存知かと思いますが、改めて私たち女性にはどんな影響があるのか詳しくお伝えします。

1. カフェインの取りすぎは女性のコンディションを低下させる

「 カフェインを取りすぎると、眠れなくなる」…これは昔から有名なフレーズですが、女性の健康とカフェインの関係を見てみると、 その影響は “眠り”だけにとどまりません。カフェインの特徴として、鉄分・マグネシウム・カルシウムなど、 女性のコンディションと関係の深いミネラルの吸収を邪魔してしまう、排泄を促してしまう作用があるため、 日頃のカフェイン摂取により心身のコンディションが低下している可能性があります。

鉄分は貧血や冷え性(血流)、気持ちのアップダウン(心の健康)、マグネシウムは便通の改善や肉体疲労、 ストレスとの関係が深く、カルシウムはマグネシウムと連携して機能する栄養素であり、 生理痛の改善やPMS(月経前症候群)とも関係が深いとされています。

実際に働く女性を対象とした調査(注1) では、貧血・冷え・疲れ・便秘の悩みを抱えている多くの女性がこれらの栄養素を不足※させていることも明らかになっています。 これらの症状は、わざわざ受診するほどではないと見過ごしてしまったり、体質や年齢のせいと原因を取り違えられるケースも多いのです。
実は、日々のカフェインのとり方、食事量の不足や栄養バランスの乱れによる”隠れ栄養不足”が潜んでいるかもしれません。

※貧血・冷え・疲れ・便秘の悩みを抱える女性のうち、栄養素の摂取が不足している女性の割合(注2)
鉄分:92% / マグネシウム79% / カルシウム91%
 

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(注1)2015年まるの内保健室調査/Copyright© 2016 三菱地所株式会社・一般社団法人Luvtelli 東京&NewYork All Rights Reserved.
(注2)2015年まるの内保健室調査/Copyright© 2016 三菱地所株式会社・一般社団法人Luvtelli 東京&NewYork All Rights Reserved.

2. カフェインをとると心の不安が大きくなる!?

実は、「カフェイン感受性」といって、体のなかでどこまでカフェインが作用するのかには遺伝子による個人差が存在しています。 カフェイン感受性に関する遺伝子タイプは3タイプに分類されます。最新の研究により、 日本人の4人に1人がカフェインをとることで不安感が表れやすい遺伝子タイプの持ち主であることが明らかとなりました。(注3) 150mg(コーヒー2杯程度、紅茶ペットボトル1本程度)でも心が不安定になるという報告(注4)もあります。

カフェインをとることで鎮静作用のあるアデノシンという物質の働きが阻害されることで脳神経が興奮し、 脳がクリアになることからカフェインに依存する人も少なくありません。 (注5)遺伝子タイプにかかわらず、とりすぎると、不眠、嘔吐、吐き気、下痢などの心身の健康を蝕みます(注6) 。 カフェインを多量に含むエナジードリンクでは死亡例もあるため、各国がとりすぎに関して注意喚起を行なっています。 入手のしやすさからとくに好きでもないけどコーヒーを飲んでいる、紅茶や緑茶(とくに抹茶入り)が好きという方、 PMSなど月経に関連するイライラや不安定などの症状のある方などはカフェインレスにしてみてはいかがでしょうか。

3. 糖質オフのお酒でも関係ない!アルコールは “疲れと痛み “に関係する

糖質制限が流行し、糖質を抑えたアルコールが増えてきました。 お酒を飲むなら、糖質が低めな蒸留酒(ウイスキー/ブランデー・焼酎など)が推奨される風潮がありますが、 残念ながらアルコールであることには変わりはなく、糖質が低めの蒸留酒はアルコール度数が高いという特徴もあります。 アルコールもカフェインと同様に、私たちのパフォーマンス・コンディションに影響を与えます。
アルコール代謝により消耗するビタミンB群は、エネルギー代謝に必要な栄養素でもあることから、 ビタミンB群の消耗が進み、その結果として代謝の低下や疲れやすさにつながります。 働く女性を対象とした調査(注7) でも、就業時間と比例して、アルコール摂取量は増加し、 反対に鉄分・亜鉛・カルシウムなどの摂取量は低下するという傾向が見られました。 また、アルコールを代謝する過程で合成される「アセトアルデヒド」が生理痛の原因物質ともなることから、 特にお酒に弱い(アセトアルデヒド脱水素酵素が少ない)体質の方はこの物質が体内に増加し、痛みを増強している可能性があります。

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(注3) 中村貴子. "お酒やコーヒーなど日常的飲み物と日本人の遺伝子." 筑波大学技術報告 31 (2011): 33-38.
(注4) Alsene, Karen, et al. "Association between A 2a receptor gene polymorphisms and caffeine-induced anxiety." Neuropsychopharmacology 28.9 (2003): 1694-1702.
(注5) https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
(注6) 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
(注7) 2015年度まるのうち保健室報告書-働く女性白書-/Copyright© 2016 三菱地所株式会社・一般社団法人Luvtelli 東京&NewYork All Rights Reserved.

4. アルコールとカフェインとの上手な付き合い方

カフェインは1日にとる『量とタイミング』を意識することがポイントです。 紅茶やコーヒー、緑茶以外にも栄養ドリンクなどにも含まれているため、日頃から習慣的に摂っている方は注意してみましょう。 タイミングとしては、食事前後30〜60分ほどの時間を開けたタイミング。カフェインには鉄分の吸収を邪魔したり、 マグネシウム・カルシウムの排泄を促す特徴があるため、なるべく食事との間隔を空けることを心がけるか、飲み物の種類を置き換えてみましょう。 生活習慣病のリスクを高める飲酒量(注8) は1日平均純アルコール量が女性で約20g以上であるとされています。 1日あたりの量を少し減らしてみる(カップのサイズを小さめにするなど)] または週に1〜2日程度休肝日を作ってみるなどご自身のスタイルに合わせて調整してみましょう。

※一般に女性は男性に比べてアルコール分解速度が遅く、体重あたり同じ量だけ飲酒したとしても、 女性は臓器障害を起こしやすいため、女性は男性の1/2~2/3程度が適当と考えられています。(注9)



カフェインリスト



お酒の種類とアルコール量の目安

根拠データ
2015年まるの内保健室調査/   Copyright© 2016 三菱地所株式会社・一般社団法人Luvtelli 東京&NewYork All Rights Reserved.



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(注8) 厚生労働省推進/国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)/生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少」
(注9) 厚労省/飲酒ガイドラインより引用しております   https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html

豊永彩子先生

著者:豊永彩子
管理栄養士/フリーランス
一般社団法人Luvtelli(ラブテリ)